The diaphragm – More than an inspired design
DOI 10.1016/j.jbmt.2017.03.013
Journal of Bodywork & Movement Therapies 21 (2017) 342-349
Impact factor 2016 : 0.883
intro
ヒトの体で、横隔膜ほど身体、生化学的および感情 的な健康に、文字通り比喩的に中心的な、筋肉はな い。呼吸における最も顕著な役割から、姿勢安定性、 脊椎減圧、体液動態、内臓健康および情緒調節にお けるあまり明らかでない役割まで、横隔膜は筋肉の 基準からすると幅広い機能のレパートリーを有する。 この論説では、Montes et a(l 2017)、および McCoss et al(2017)の論文が、体幹安定性と横隔膜の相互 作用の役割についての新たな洞察を提供し、体性-体 性反射を介した頸部の侵害受容に対する横隔膜リリ ースの影響をそれぞれ示している。
横隔膜は、-Strength&Conditioning Coaches(Chek、1994) とリハビリテーション専門職(Lee、1998)により 体幹安定機構の重要な部分であると長い間考えられ てきた。 -呼吸再訓練の専門家によってしばしば働かなくな ることがあると考えられている(Chaitow、2014)。 somato-emotional release(Manheim and Lavett、 1989)で働くセラピストの鍵となる筋肉であること が判明した。 -爬虫類の身体機能と哺乳類の身体に関する辺縁系 - 情緒機能との間の比喩的かつ文字通りの移行点であ ると考えられている。 (進化の過程を言っている) -Osteopath(マニュアルセラピスト)は、長い間、 身体内区画の圧力を調節する多層性横隔膜システム の中で、呼吸のための横隔膜をその一部として考え てきた(上は頭蓋硬膜で始まり、次に後頭下群、鼻 咽頭の上舌骨群、声門と蝶形篩骨蓋、胸膜穹窿と頸 胸筋膜、横隔膜自体および骨盤底(Keleman、1989)。
1. 横隔膜の機能解剖
Gray's Anatomy では、胸部と腹部の間にある少し変 形した 1/2 ドーム型の筋繊維組織として記述されて いるように、横隔膜は複雑な複合組織である。その 筋線維は、胸骨、肋骨および腰部(脚部)各群を形 成し、一般に、その間にある器官によって形作られ た機能的に連続したシートと考えられている。横隔 膜の胸骨部分は剣状突起に付着する。肋骨部分は腹 横筋と線維を交わす下部 6 肋骨の内面に付着し、腰 部は弓状靭帯および L1,2 および 3 の椎骨に付着する (図 1a 参照)。この詳細は、これらの構のいずれ
かの機能不全が、最適な横隔膜機能を妨げると合理 的に推測することができ、逆もまた同様であるため、 臨床的に理解するのに有益である。 弓状靭帯(内側および外側、左および右)は、大腰 筋、腰方形筋、および腹横筋を裏打ちする筋膜(腹 横筋筋膜)と線維を筋膜を通して共有しその周りを 回り込んでいる。したがって、これらの筋肉の緊張 の変化は、横隔膜の機能に影響を及ぼし、その逆も 当てはまる。
2.進化発生生物学 Evolutionary developmental biology
横隔膜がどのように機能するかを理解するには、横 隔膜がどのように今の形になったかを最初に調べる ことがしばしば有用で ある。さらになぜ横隔膜に単 純なリリース処置をおこなうと頸部の痛みの知覚を 変えることができるのか(McCoss et al.、2017); ど のような姿勢が横隔膜の能力に影響をあたえるか (Montes et al.、2017)を理解するためにも。
3.進化
鰓器官を使用した呼吸とは異なり、吸引呼吸には体 壁の筋肉と、祖先である魚の移動器官を構成する骨 格筋の派生物を利用した吸引が必要である(Perryet al. 2010)。 以下に述べるように、横隔膜の主な機 能は換気、特に安静時に、であるが、このことはそ の進化に於いて、換気の主要な動力ではなかったか もしれない。 実際、横隔膜の吸気的役割は、その元々 の発達の外適応(目的外適応)または「副作用」を 表している可能性がある。 魚では、外および内腹斜筋が体壁を形成するが、こ れに対して四足動物では新しい筋肉群つまり腹横筋 が現れる。 McCoss et al.(2017)は、このことに加 えて、呼気では認識さているが、吸気でも腹筋群が 緊張活動を通じて大きく寄与し、吸気時の過度な短 縮を防ぐことにより、横隔膜筋収縮を直接促進させ るこことを指摘している。 哺乳動物では、胸郭体積が低い場合には内外肋間筋 が胸郭容積を増加させ、高肺容積では胸郭容積を減 少させる。 頸部筋の収縮が最初の第1及び第2肋骨 を固定するとき、肋間筋の側方部分は胸郭容積を増 加させることができる。 しかしながら、腹筋が最も 尾側の肋骨を固定する場合、同じ筋肉の収縮は逆の 効果を有する。 このように、Perry et a(l 2010)は、 肋間筋が呼吸運動よりも姿勢制御および運動に関与 している可能性が高いと述べている(図 4 の内臓支 点理論を参照)。 横隔膜の吸気機能は、低いコンプライアンスの(堅 い)肺の同時進化を可能にする肋骨呼吸を補助するように最初進化した可能性が高い。このことは非常 に強い腹圧の発生を可能にする。 これは、胎児の後 期の発達(早期から生存可能な状態で出産させる) および、特にヒトにおいて、不安定に大きな脳を有 する新生児の出産の可能性において重要な役割を果 たす可能性がある(Perry et al。 2010)。 興味深いことに、肺に向かって空気を運ぶために肋 骨呼吸が発生させる胸腔内陰圧も、腹部の内容を胸 郭に吸い上げるので、肋骨呼吸のみでは機械的に不 足である。 哺乳動物の横隔膜の進化はこの現象を打 ち消し、ひいては肋骨呼吸の効率を高める。
4.胎生発生
横隔膜の形成に寄与する 5 つの要素が存在する(上 記図 1b 参照)。まず、C4 筋節からの中胚葉(筋前 駆細胞)は、横中隔に侵入し、C3 および C5 からの 寄与とともに筋肉横隔膜の大部分を形成する (Fitzgerald and Fitzgerald、1994)。第 2 に、胸 膜嚢(胸腹膜)と呼ばれる体壁の一部が剥離して、 心膜嚢および横隔膜の結合組織の層の両方を形成す る。これは、第 7 から 12 までの肋間神経からの感覚 線維の存在を説明する。第 3 に、食道は、腸間膜か らの結合組織の層に寄与し、そこでは食道と下大静 脈が横隔膜を通過する(どのように横隔膜神経支配 に関連しているかは下記参照)。第 4 に、横中隔も 腱中心の線維組織に寄与する。最後に、胸腹膜は、 明確な腹腔および胸腔(Drews、1995)を形成する ために前方に至り横中隔と接触し体腔管を密封する。 (Fitzgerald and Fitzgerald、1994)同時に腱中心 周囲の筋組織に結合組織を形成させる。 *これは、McCoss ら(2017)の推論を付随する論文 で焦点が当てられ、領域間相互依存阻害(添付した別 論文参)の C4 レベルを評価することに役立つ(横隔 膜神経が帰る C3 または C5 分節とは対照的に)。 横中隔は、胚が僅か 1.8mm の長さである子宮内 21 日目頃に胚が折れ曲がり始めるとき、胸腔に下降し 始める(Drews、1995)。 これに先立って、原始心 臓または心原板は、胚が 1.5mm の長さである子宮内 19-21 日目に胚の頭端に見出される。 この時点で、 心臓が鼓動し始め、胚が卵黄嚢から折り畳まれ、原 始腸管を形成する(図 2B の iv))(Drews、1995 p68)。 横隔膜の中隔を先に押す心臓の下降をもたらのは、 この折り畳み過程である。これにより、横中隔は押 され、最終的に横隔膜を形成する。 身体の前壁は、後に腹横筋(TrA)、内腹斜筋(IO)、 外腹斜筋(EO)になる組織の 3 層シートによって形 成される。胸部領域では、この層は成長する肋骨に よって貫通され、これらの筋肉シートを解剖学者が 「肋間」と呼ぶものに分ける。頸部領域において、 組織のこの同じ層は、額の上から下に移動し、胸腔 の中に下降する心臓によって分割される。この心臓の下降は、頚部領域の三層組織の分裂を生じさせ、 最終的には、それらを成熟した形で前斜角筋(原始 TrA)、中斜角筋(原始 IO)および後斜角筋(原始 EO)とよぶ両側の頸部筋群を形成する。 多くの解剖学書は、典型的には、斜角筋の作用を頚 椎側屈筋と呼吸補助筋としている(Kendall ら、1993) が、詳しく呼吸パターンを研究した人は、横隔膜、 肋間筋 腹壁筋群と同様な呼吸主動筋として斜角筋 をとらえている (Chaitow, 2014; Perry et al., 2010)。 成熟した胸壁では、解剖学者は外肋間筋(表層)、 内肋間筋(中間層)および最内肋間筋(深層)と記 述している。最内肋間筋は、特に胸郭上部( "Grays"、 1991 年)では "斑状"であると記述されている。この 斑状の形態は、胎生発達の間に発達中の横隔膜が頚 部領域から下降したときに、この最内肋間筋から借 用または充当(Beach、2010)したためである。こ のようにして、横隔膜は、腹横筋が肋間筋の背部か ら剥がれ、上に述べたような要素と混じり合って袋 を形成したように見ることができるのである。 心臓の横隔膜、横隔膜、およびその下の肝臓は、胎 児の大部分を占め、首の境界線を内側に引き寄せ、 体腔を満たすのはこの下向きの牽引力である。成人 の首と肩の特徴的な形を作り出している (Blechschmidt and Gasser、1978)。この発達メ カニズムを理解することは、次に臨床家が患者の首 を牽引する際に異なる認識感を生み出すかもしれな い(図 2 参照)。
5.横隔膜の神経学
横隔膜は複合的で深部に存在するため、横隔膜の神 経支配に関して何年もの間、何らかの議論があった。 横隔膜神経(C3,4,5 および時には C6)は確かに横隔 膜に運動神経と感覚神経の両方を供給する。 しかし、 横隔膜の周囲には、下部の 6 または 7 の肋間神経か らの感覚供給もある。 このことが、この Rehabilitation 部門で紹介された McCoss et al (2017)の論文を誘導した。 最も容易に触知できる のは周辺の横隔膜繊維であるため、横隔膜に対する このような治療は、横隔膜神経(頚椎)のレベルで はなく、肋間神経(胸部下部領域)のレベルで組織 に最も影響を及ぼすように思われる。すでに横隔神 経への影響は McCoss らが見出した。臨床的意味は、 横隔膜の末梢(肋間神経部分)に適用された「リリ ース」技術でさえ、横隔膜のより中央部(横隔膜神 経部分)に影響を及ぼし得ることである。 局所解剖学という点では、横隔神経は、前斜角筋に関連する筋膜内を走行する。 この臨床的意義は、前 斜角筋の損傷(鞭打ちや直接的な外傷など)や筋肉 の慢性的な過負荷(顎だし姿勢、上十字症候群また は層状症候群に一般的に見られるような)のあらゆ る種類の傷害が、 横隔神経機能に影響を及ぼし得る ことである。下位運動ニューロンでは、長時間の圧 迫に対する正常な応答は、感覚運動制御の減少であ り、これは時間の経過とともに神経が分布する組織 に萎縮を引き起こす可能性がある。 これは、呼吸パ ターン障害のある人のための病像の一部であり、効 果的なマニュアルセラピーと姿勢矯正プログラムが 完全なリハビリテーションの重要な要素となる一つ の理由の可能性がある。
異なる視点から、Pickering and Jones (2002)は、 呼吸生理学者または解剖学者に以下のことを強く示 唆している。横隔膜はもちろん呼吸の主働筋である。 しかし、胃腸生理学者は、胃の内容物が食道に逆流 するのを防ぐのに役立つこの筋肉の価値をますます 認識している。 Pickering and Jones (2002)によ ると、横隔膜は、呼吸を通して同期して行動する 2 つの異なる筋肉、肋骨部と脚部とみなされるべきで ある。 しかし、これらの 2 つの筋肉領域の活動は、 嚥下や嘔吐などの特定の事象中に同期しない可能性 がある。 さらに、一過性の脚部の弛緩または阻害は、自発的 な酸逆流エピソードに関連する(Young ら、2010)。 この知見を支持するために、他の研究者らは、横隔 膜のより深部の脚部線維が横隔神経によって神経支 配されないことを見出したが(上記のように)、迷 走神経が感覚および運動成分の両方においてこの役 割を果たす。 これはまた、胃食道逆流を有する患者 が、これらの深部横隔膜脚部線維および/または迷走 神経自体に影響を及ぼす可能性のある治療から恩恵 を受ける可能性があるため、臨床的に重要な結果を もたらす可能性がある。 したがって、迷走神経緊張 の変化は、逆流の問題の主要な要因となる可能性が ある。 また臨床家が長期的な病態管理の戦略に向か うのを助ける。 食物塊が胃に容易に入るようにするためには、脚部 横隔膜が短時間弛緩する必要があり、この時他の横 隔膜部分が吸気中に収縮し、これにより食物塊が横 隔膜を通過することができる。 この横隔膜脚部の反 射抑制はまだ不明確であるが、両側の迷走神経切断 の研究で反射が消失することが示されている。 嘔吐中、脚部と肋骨部は乖離した活動をおこなう。 胃の内容物の排出を可能にするために弛緩する脚部 と、腹圧を増加させ、内容物を逆流させる肋骨部と いう逆説的機能形態である。この機構の機能不全は、 逆流予防に重要であるだけでなく、突然の乳幼児突 然死症候群の原因となる可能性も示唆されている (Pickering and Jones、2002)。 現在の酸逆流の 治療法は、胃酸を中和することによって症状を治療
しようとしているが、一時的に脚部に反復弛緩が起 こる根本的な原因に対処していない。 これは、局所 治療と交感神経緊張の制御により注意を向けるべき 横隔膜脚部の神経制御が障害された疾患なのであろ うか? 横隔膜の起源を考慮する時の重要な質問は、呼吸筋 が消化器系に動員されたか、または消化器筋が肺を 換気するようになったかということである。 1 つの 仮説は、地上の四足動物の水生祖先が、水面上で弱 点になり、潜水することができない呑気症(空気を 嚥下する)を防止するためのメカニズムとして横隔 膜を発達させたということである。 別の考え方は、 脚部がひとのみにした生きた餌食を胃から逃すのを 避ける役割をしたということである。 横隔膜の起源にかかわらず、明確なことは、単なる 体壁の誘導体というよりも生物の機能にとってより 重要になってきたということである。
6.体幹の運動制御
Beach(2010)は横隔膜を彼が名付けた横径収縮場 の重要な要素だと設定している。進化の観点から、 Beach は「長さ(伸張)を保つために、脊椎動物は 胴を絞り込んだ」としている。四足動物は、同じ筋 肉を呼吸のために使用する。絞り込みと吸い込みは 同じコインの表裏である。Beach は、体幹で荷物を 運んだり運搬したりする際には、この理解を利用し て、締め付けの重要性(ひいては体幹の縦方向の伸 びや軸方向の伸び)を強調している。このことで、 歩行、持ち上げ、または持ち運び中(例えば、子供 を抱えたり、狩猟の獲物を背負うこと)に使用する ことができる。 横隔膜は、腹部シリンダーの重要な構成要素である と考えられて、腹横筋、骨盤底筋および脊柱の深部 固有筋と連携して、運動中の他の内的、外的ストレ スを抑える十分な剛性を脊柱に対して作り出すと、 Hodges(1999)はのべた。
Hodges らによるさらなる研究 (2001)では、三角 筋、横隔膜および腹横筋からの細線 EMG 信号を評 価した。 Hodges らの研究の目的は、急激に肩を屈 曲、伸展した状態で、どのようにして横隔膜と腹横 筋が安定化の役割を果たしたかを理解することであ る。 以前の研究(Hodges、1999)は、これらの体 幹筋が肩関節の能動的運動の前および最中に体幹の 安定性を作り出したので、これらの体幹筋には前収 縮(フィードフォワード機構と呼ばれる)および共 同収縮の両方があることを同定した。 しかしながら、 Hodges ら (2001)が、この例で理解しようとした ことは、運動やスポーツでよく経験されるように、 生理学的疲労の増加の条件下での安定機能と呼吸機 能がどのように関連するかであった。 あまり驚くことではないが、彼らは、腕の動きの最 初の 10 秒で、TrA および横隔膜は、最適な体幹の剛
性および脊椎の安定性を維持するために緊張維持状 態で協働収縮することを見出した。 肩の動きの代謝 ストレスが増加し、それに伴って酸素負債が起こる ので、神経系が呼吸を優先させ始める。 横隔膜は、 時間の経過とともに呼吸要求により位相的に働く。 TrA は、横隔膜との相互関係において、緊張維持よ り位相性に移行した。 横隔膜が収縮相になると、 TrA は収縮を減少させ、横隔膜が緊張を減少させる と(弛緩または遠心性収縮)、TrA はプッシュプル 関係でその収縮を増加させる(Hodgesetal.、2001)。 この配置は呼吸と安定の両方の要求を維持し、呼吸 サイクル全体を通じて腹腔内圧力を維持する。
Ross et al. (2013)は、哺乳動物、魚、およびトカ ゲの摂食の間のリズムの違いは、それらの感覚運動 制御システムの違いに関連するという仮説を記述し た。 彼らは、摂食行動におけるこの異なるリズム性 が自発運動の相違と一致するかどうかを試験した。 咀嚼と歩行の両方が中枢神経系のパターン発生中枢 によって強く影響を受ける。 より律動的な動きであればあるほどエネルギー効率 が良くなり、より安定する。 不安定または非律動的な状態は変動性の増大により 特徴付けられるため、これらの非線形状態変化を監 視し修正する能力は、他の刺激に対する注意を払う ことになり、中枢神経系に大きなストレスを与える (Ross et al.、2013)。 代謝率の高い温血生物はエネルギー需要が大きいの で、リズムと予測運動制御は疲労を避けるか遅らせ るのに役立つ。 横隔膜に関する限り、それは律動的 であり、摂食行動に関連する歩行(以下を参照)と 位相ロックされており、疲労に抵抗性ではあるが、 時間とともに疲労の徴候を示す。 Daley et al. (2013)は、呼吸筋疲労が人間の持久力活動の制限 要因となりうることを指摘しており、運動 - 換気結 合は疲労を最小限に抑える可能性があると指摘して いる。
7.骨盤底筋機能障害
骨盤底は、吸気中に内臓の下降圧を吸収する横隔膜 の反対面として機能するので、その最適な機能は完 全な横隔膜機能にとって重要である(Beach、2010)。 腹壁および骨盤底は、収縮する横隔膜によって生成 される内臓圧に対して単に「押し戻す」よりも大き な役割を果たすことがあるかもしれない。 横隔膜は 非常に低レベルの紡錘細胞しか有せず(Pickering and Jones、2002)、したがってそれ自体が圧力を 効果的に調節することができないことがある。 代わ りに、腹壁および骨盤底の紡錘細胞からの情報に依 存して、神経フィードバックループで横隔膜の活性 化レベルを調節する可能性が高い。 これは、後述の 呼吸の内臓ピストン機構の効率的な機能において非 常に重要である可能性が高い。
興味深いことに、横隔膜の強大な力にもかかわらず、 その線維の解剖学的方向は、その収縮力の大部分が 末梢方向の下部肋骨に伝達されることを意味する。 内臓に下向きではない。 これは骨盤底への圧力を緩 和するのに役立つ(Paoletti、2015). Perry et al. (2010)の説明では、縦方向に垂直な横隔膜の周辺 部は、下部胸郭の内面と、総高のおよそ 3 分の 1 を 占める「zone of apposition」にわたって接触してい る 。 したがって、下部肋骨は、腹圧に曝されるの であって、胸腔圧には曝されない。横隔膜の肋骨部 分が下部胸郭を拡張する一方で、横隔膜脚部は胸郭 の径をあまり変化させない。 横隔膜脚部は軽度の呼 吸器の役割を果たしているようだが、(前に説明し たように)嚥下や嘔吐、逆流の予防などの胃食道機 能にもっと関与する。 本質的に骨盤底の完全な作用に対するリスクを緩和 するのは下部肋骨の移動性であり、 したがって、外 傷、不良姿勢や感情的による姿勢変化の結果として のこれらの肋骨のどのような制限も、腹圧性失禁ま たは脱腸などの骨盤底の問題を引き起こす連鎖の一 部であり得る。 肋骨、胸椎、胸骨、胸骨の関節の癒合により拘束性 換気障害が発症する可能性のある強直性脊椎炎では、 極端な下肋骨拘束が生じる可能性がある(Kanathur and Lee-Chiong、2010)。 そのため、横隔膜機能および骨盤底ストレスに対す る下部胸郭の機能と能力を評価する手段として、通 常、強直性脊椎炎を評価するために使用される胸部 拡張試験の変更した方法を考慮する価値があるかも しれない。Magee(2008)に記載されているように、 検査の1つのバージョンは、患者が完全に吐き出し、 T10 のレベルで測定を行うことである。 その後、患 者は完全に吸入して、許容できる所見は、胸郭が 3 〜7.5cm の間で拡張することである。 この試験の懸念の 1 つは、強直性脊椎炎のような潜 在的な病気を診断する価値がある一方、名目上の白 黒の結果(3cm 以上の拡張、1/4 パスの拡張、2.9cm 1/4 の不合格)に基づいていることです、機能的なも のから機能的でないものへの尺度(図 3 参照)とは 対照的である。
8.頸部と上肢のモーターコントロール
横隔膜神経は C3-C5(時には C6)レベルからの神経 支配を受けるので、頸神経叢および腕神経叢の両方 にまたがる。これは、横隔膜からの異常な求心性信 号が、頸部または肩部および腕部におけるモーター コントロールを変化させる可能性があるため、重要 な臨床的結果をもたらす可能性がある(図 5 参照)。 異常もしくは過剰な神経作動がある時、低閾値運動 神経細胞が最初に影響を受けることは重要である。 これは、頸部および上肢関節における最適な瞬時回 転軸(OIAR)を維持し、運動制御を最適化するのに
重要な緊張性運動ニューロンが抑制されることを意 味する。臨床家が理解するのに有用なことは、症状 が最終的に現れるまで、何ヶ月も何年もほとんど OIAR のそのような中断は、ほぼ常に症状がないと いうことである。このような症状、例えば肩峰下イ ンピンジメントは、通常局所的に治療される。 McCoss et al. (2017)によって行われた研究は、 そのような一般的なモータコントロール症状が、実 際にはこのシステム内の他の場所の機能不全の症状 の結果であることを強調するのに役立つ。
9.感情と横隔膜
プラトンとアリストテレスは、胸腔と腹腔を隔てる 隔壁が消化過程の影響から心臓(魂が宿ると される)を保護すると主張した(Perryetal.、2010)。 心との直接の関係で、 解剖学的にも神経学的にも (Keleman、1989; HeartMath、1999)、感情状態 が横隔膜の機能に影響を及ぼしたり、その逆もある ことはほとんど驚くに当たらない。 西洋文化の多くでは、青年期を通じて進歩している 子供たちは、しばしば感情を表現するのは幼稚であ るとか、泣くのは赤ん坊であるという概念にしつけ られていく。 この誤りは、おそらく感情が表現され ていない、もしくは「吐露していない」ときに起こ り得る身体表現の過程の詩的で実際的な記述である 「身体が涙をながすのであって、目は泣かない」と いうフレーズで最もよく集約される。 このような感情表現の臓器がまさに横隔膜であると いう事実は、なぜ横隔膜のリリース治療が体性感情 リリース技術の重要な構成要素であると考えられる のかについての説明を提供するかもしれない (Manheim and Lavett、1989)。 感情が体を通してどのように自然に放出されるのか をよりよく理解するためには、社会化を通じて彼ら の本来の本能を訓練する前に子供を研究することが 有用かもしれない。 ほとんどの人は、子供が転んだ り、戸口に指を挟まれるのを見たことがあるが、息 が激しく吸われ(横隔膜の収縮)、通常は 1〜2 呼吸 の沈黙が続き、子供じみた泣き声が始まる。 さらに 喘ぎが続き、さらに泣き叫ぶことになる。 痛みを泣いたり表現したりする過程で、子供は文字 通り神経系から痛みを表現したり、解き放つ。 これ らの空気の飲み込みは横隔膜収縮によって形成され る。泣き叫ぶことは、最大限の腹壁の収縮と横隔膜 の弛緩である。 本質的には、安定性と呼吸の関係性 において上述したのと同じプッシュプル関係である。 問題は、同じ痛み(肉体的または感情的)を感じ、 同じ反射的な深呼吸をしているが、泣いたりして悲 しみを完全に表現していない、成熟した大人はどう かということである? 横隔膜はその収縮力を維持 しているのか? そして、そうであれば、腹壁とのプ ッシュプル関係において、横隔膜は現在「オン」つ
まり緊張状態であり、腹壁は今や「オフ」つまり弛 緩して膨張している。 私の Hodges et al. (1999, 2001)の論文で述べたように、これは体幹筋が効果的 に機能し脊柱を安定させるための有意義な影響をも たらす可能性がある。
10.現代の感情の議論
Kitchen(1885)は、彼の著書 The Diaphragm で、 コルセットのファッションの挑戦と、これがどのよ うに「鎖骨呼吸」(胸式呼吸)と横隔膜の抑制を作 り出しているのか、を説明した。 その重要な懸念は、 そのような重要な筋肉の弱化および萎縮である。キ ッチン(1885)は、「千年紀が来るだろう。その前 にコルセットが消えなければならない」と述べてい る。キッチンの願いは大部分実現されたが、メディ アが吹聴する最適な体形(または体格)に対する若 年者の圧倒的な衝撃は、過去数十年に亘って身体異 型障害の診断例を生み出した(DSM-III 1987 年版 (Wikipedia、2017))。これは、腹壁の筋肉を利 用して身体のコルセットを作り出し、今日の千年紀 の人々における機能不全の呼吸パターンの高い発生 率に寄与する可能性がある。この身体化されたブレ ースは、取り除くことがより困難であるとわかるか もしれない。
11.最適な横隔膜と呼吸の健康
横隔膜および呼吸器の健康な状態で臨床的に動くこ とは、専門化と総合的な概観を必要とする大きな分 野であることは明らかである。 特定の呼吸に基づいた訓練の 2 つの提案は、実践的 な論文「利益の実現が利益を実際にもたらす」で見 つけることができる。 これらの提案以外にも、マニ ュアルセラピストにとっては、McCoss ら(2017) の論文で説明されているリリーステクニックは、横 隔膜の肋骨部の隠れた張力を識別するのに有益であ り得る。 頚椎分節への横隔神経の求心性駆動に効果 的に影響を及ぼすようである。 興味深いことに、横 隔神経は、横隔膜からの求心性神経を含むだけでは ない。 犬の研究では、心臓の心膜、肝臓および下大 静脈からの感覚駆動がすべてこの神経内を移動する ことを示している(Pickering and Jones、2002)。 したがって、これらの器官は、呼吸パターンが崩壊 したときの病歴で考慮されるべきである。 このセクションの別の論文では、Montesetal(.2017) は、腹壁(および骨盤底筋)の相乗的コンディショ ニングを促通し、横隔膜の効果を支持できるような、 ボディーワーカーまたは運動療法士が利用できる一 連の介入を研究し議論した。 このような腹壁のコンディショニングは、呼吸パタ ーンを最適化し、律動的歩行の利用、内蔵ピストン 運動の誘導を(これらは機能的な腹壁と骨盤底筋に 依存している)するための別の単純ではあるが強力
な推奨事項と深く関わっている。 Chaitow(2014 年)によると、過換気者の呼吸は常にく、不安定 である。 歩行の律動は、呼吸を規則的なパターンに 連動させるために使用することができる。例えば、 吸入のための 2 つのステップ、呼気のための 2 つの ステップ、および息の間の死腔のための 2 つのステ ップ。 もちろん、立位および歩行における横隔膜に 対する姿勢の負荷のために、これは、フォームロー ラーを長軸方向に使うエクササイズよりも、横隔膜 呼吸のためのより高度なレベルのリハビリテーショ ンである。
Daley et al.(2013)は、歩行における運動 - 呼吸 カップリングを調べ、多くの脊椎動物において呼吸 とステップリズムとの間に「位相ロック」が存在す ることを見出した。具体的には、4 足の哺乳動物は、 内臓塊が前足部ストライクでは頭部に向かって、そ して後足ストライクでは尾部(に向かって大きくシ フトするため、呼吸数あたり 1:1 のストライドで位 相ロックする。 この矢状面の屈曲 - 伸展は、内臓 がピストンのように振る舞うように「じゃばら」効 果を生み出す。 しかし、人間は、2:1、2.5:1、3: 1、または 4:1 のカップリングによる呼吸パターン の柔軟性を示しているか、場合によってはカップリ ングを完全に欠いている(Daley et al.、2013; Perry et al.、2010)。 歩行における一貫したフェーズロックの明らかな欠 如が存在する理由は Daley et al.によると、(2013 年)は、二足歩行に関連する適応による可能性があ る。 これを可能にするメカニズムの 1 つは、人間が 矢状面の土地を横断するために横断面戦略を使用し、 重力ストレスを最小限に抑えるという概念である (Wallden、2008)BrambleandLieberman、2004)。 これにより人類は最も効率的に陸地を横断する動物 となった。Hodges ら(1999)の腹部の臓器が横隔 膜、TrA、 骨盤底筋に囲まれた内臓シリンダーとし て機能する観点に基づいて、Wallden(2000、2008) は、この同じメカニズムは腹斜筋がより効率的に体 幹の横断面の動きを歩行や力のいる動作で生み出す 支点はとして現実に機能すると提唱した。(図 4 参 照)。 それにもかかわらず、内臓ピストン理論は依然とし てヒトのデータによって支持されている。歩行時の 横断面のキネマティクスの余裕がより高いにもかか わらず、前足ストライクによって最小限に抑えられ た、人間の歩行に関連した明確な上下の正弦波が存 在する(ジョギング時に最も大きく、歩行時または い走行時に最も低い)。最も一般的には、自然の 裸足状態で走ることに関連している(Lieberman et al.、2010)。また、人間の歩行における踏み込みに よる呼吸タイミングの明確な変動があるにもかかわ らず、人間は広範囲の持続可能な走行度にわたっ て 2:1 の割合(ステップ:呼吸)に固定することを
内臓ピストンの概念を支持するように、好む。 1 つ の研究では、エネルギーコストが最小である好まれ る度で運動 - 呼吸カップリングの最高の変動が 起こることが分かった。好みの度を上回るか下回 る度では、エネルギー需要は急激に増加し、被験 者は 2:1 カップリングの強い好みを示した(Daley et al。、2013)。このような人間の走行におけるフェ ーズロックは、効率を最適化する上で内臓慣性を管 理することが重要であることを示唆しているが、4 足走行で生じるような 1:1 呼吸:ステップの位相ロ ックが必要であることはそれほど驚くに当たらない。 おそらく、内臓支点理論は、人間の歩行が内臓の慣 性という代償の影響をどのように減衰させるかを説 明することを何らかの形で進めている? 人間の歩行に対する内臓ピストンの理解が高いこと で明らかになるのが、内臓を横隔膜の中に押し戻す ことを最適化する際の腹壁と骨盤底筋の機能的緊張 とコンディショニングの鍵となる重要性である。そ れは最適な呼吸のために下部胸郭を拡張させる。コ ンディショニングされていない、または抑制された 腹壁は、内臓の過度の垂れ下がりや内臓下垂を許し、 吸気のために下部胸郭を開いて横隔膜に戻すことが できる逆圧力を最小限に抑え、その後、 最大呼気で 横隔膜を上方へと押し戻す。 内臓のこれらの 2 つの 機能は、実際には、人間の走者で観察される 2:1 の 比と相関する可能性がある。地面反力の左足は、内 臓の下方への降下を生じさせ、腹壁を収縮させて内 臓を横隔膜に戻し、 吸気のために下部胸郭を広げる。 右足の地面への衝撃は内臓の下降を引き起こし、同 じ機構を介して、呼気を促進するために横隔膜の弛 緩と連動して内臓は元に戻る。このように 2 つのス テップで1つの呼吸サイクルを形成する。 「内臓」という用語は、言うまでもなく、粘性とい う言葉から派生したもので、非圧縮性を意味する。 議論したように、腹壁と骨盤底の最適な緊張と機能 との組み合わせによる内臓の粘性の性質は、呼吸に 対する横隔膜の有効性の鍵である。 したがって、骨 盤底機能障害の下での上記の議論とは対照的に、 我々は、下部胸郭の動きの欠如や最終的には関節の 可動域制限の原因となる前兆現象として、腹壁の緊 張の低下または抑制に注意を向けるかもしれない。 律動は快適、鎮静、傾眠である。 Liebenberg(2012) は、人間のトランス状態を誘発する 3 つの方法があ るという考えについて議論している。1)疲労状態へ の身体の運動。 2)リズム。 3)強い集中。 特に狩 猟の最も古い形態で起こるような、動物を追うとき の裸足の走りは、3 つの基準すべてを満たす。 その ようなトランス状態は、瞑想とはほとんど区別でき ない。それによって心だけでなく、上で説明したよ うな呼吸パターンに、確かにはいる。 大うつ病性障害の被験者での強い集中(集中注意瞑 想)と運動との併用効果を評価する最近の研究では、
1 週間に 2 時間のセッション 8 週間のプログラムで うつ症状の 40%の減少が見られた(Alderman et al。、 2016)。臨床的うつ病と不安を抱える患者の有酸素 運動の利点を特定する同様の研究は、Ratey and Hagerman(2010)によって記述されている。新し いニューロンの成長を刺激し、うつ病の症状を最小 限にするのに役立つと考えられる脳由来神経因子 (BDNF)の運動誘発性産生に加えて、運動そのも のにが、不安または過換気の患者が、心拍数と呼吸 数が上昇しても(運動とパニック発作の両方で起こ るように)、それは再び落ち着くことを認識するこ とを助ける。この生理学的反復および心理的認識は、 呼吸パターン障害、不安およびうつ病の患者が過換 気によってもたらされる不安を最小限にし、それに よって悪循環を解消するのにしばしば役立つ。
感想:位相ロックの議論から、実際の歩行や走行で 体幹固定を観察してみることが必要であるかもしれ ない。また横隔膜機能が完全であれば、自動的に位 相ロックは最適な状態に保たれる可能性も感がえら れるかもしれない。
12.結論
横隔膜は、頸部、胸壁、腰椎および食道に至るまで の身体組織に由来する複雑な複合筋である。 その役 割は、呼吸から消化まで、安定から感情状態の調節 まで、多因子である。 したがって、横隔膜で効果的 に作業するには、幅広い理解、総合的アプローチ、 多分多分野のチームが必要である。 この論説は決し て完璧なものではないが、この筋肉が持つ相互作用 の幅を垣間見せれば幸甚である。 読者が横隔膜がた だ単に呼吸に合わせて設計されている以上のもので あることを理解するのを助ける、より実り多い臨床 介入を促進するかもしれない。